2013年3月22日金曜日

良い包丁は少ない

親父さんと渡辺さん・・・この二人が出会うことが無ければ、きっと高橋の包丁は

町の鍛冶屋が作った包丁ぐらいではなかったかなと思えます。

30年も前から使っていてステンレスは斬れないダメな包丁ばかりなのに?

高橋の光はなぜだか凄い・・・一本目はそれが判る前に折れて・・・でも普通な感じだと

思っていたのか砥ぎが悪かったのか?

2本目のペティーから凄かった・・・それから25年。なぜ?どうしてこのステンレスの包丁は?

多分?兄弟も親父さんも当たりな包丁だったんだろうって・・・・?

光なのに極上のペティーと比べても何故か?良い・・・・

鋼材を切る金属で包丁を造れば凄いだろうと試した親父さんとそんな刃物鋼では無い

金属で包丁を作ろうとする事に面白いと思った渡辺さん

ここからがステンレス系の特殊鋼の始まりでした・・・

あるときに、オヤジさんが作ったハガネの包丁を検査したら硬度計が振り切れる?

工学博士の下で教え込まれた渡辺さんはビックリ・・・硬度が70を振り切れたんだそうです

どうしてか調べると、コークスの火で練りこむ仕事をする親父さんの仕事では

鉄に炭素が入り込み元のハガネより炭素量が増える・・・増えてる。

ココが面白いと思った渡辺さんは、親父さんの技術で最新の設備で造るより

コークスで火作り鍛造の方が高橋の包丁の特殊性が出るとふんだそうです・・・・

渡辺さんの上司が作った、天と地獄の境目な金属は兎に角扱いづらい

うまく出来ると、こんな素晴らしい金属は無い・・・しかし難し過ぎる

兎に角難しい金属でうまく出来る所が無い・・・

扱いやすくする為に下げて下げて・・・今の金属になったのですが

この金属をまぁまぁ良く出来たのがオヤジさん・・・・

親父さんも店が傾くほど失敗して、その都度試験して結果を教えて

それこそ。技術屋と職人の意地の張り合いであったそうです・・・

一から金属の事を親父さんに教えて、焼入れの温度から温度を下げる技術まで

ハガネと特殊鋼の違いが多すぎる・・・・そう簡単に手造り出来る品物では無い・・・

昔からの焼入れは、焼きが入らない事で割れない包丁を作る・・・

包丁の波紋がそうです。温度の上がらい部分を作ることで焼きが入らない・・・

ある一定の温度で包丁を熱し、急激に温度を下げることで初めて焼きが入るという

事なんだそうです。これが難しい・・・例えば1200度で焼いて水に入れるとすると

急いでも直ぐに水の中に入れるまでに温度が下がるので、いくら水でやっても

ちゃんとした焼入れは出来ない・・・サブゼロも同じ・・・うまく出来るとこんなに凄いか?

と言うのが出来るんだそうです。

特殊鋼を焼くのにも難しい温度管理が有りまして。

技術の進歩で真空窯で焼くのが有りますが、費用が凄く掛かるので

包丁の大きさがまちまちでも一緒に入れる・・・これでは大小で焼きの温度が

微妙に変わる・・・100が素晴らしいとしても完璧では無い・・・

サブゼロも100本作っても本当にいいものは何十%なのか?

そんな訳で作りやすい鋼材を作るのもメーカーの仕事・・・

高橋の光は空冷ですが、空冷で焼きが入る金属を作った技術屋がいるからなんですね。

極上も空冷で造れて恐ろしく斬れる包丁なのですが、そんなD15を作ったのも

技術屋さんなんです。逆に空冷でOKな金属なので水焼きは難しい・・・

想定外の作り方では、技術屋さんでは造れない・・・逆に親父さんは経験と

面白い発想でD15でも水焼きを作ってしまう・・・・渡辺さんもびっくりなワケですよ・・・

高橋で秘密の工程がある訳ですが、オヤジさんが発案したって言いますが・・・

実は、それまでの工程ではダメなので渡辺さんが教えた事をやっているわけです・・・・

ここは兄弟でも知らない実話です・・・・

俺がいつも不思議に想っていた、鍛冶屋がこんな包丁出来るわけないだろ?

たかが町の鍛冶屋が凄すぎるぞ・・・って・・・

高橋のHPでは最初のページに顕微鏡で撮った包丁の画像があります。

どう見ても少し古い写真なんですね・・・町の鍛冶屋がここまでするの?って

昔なら凄く高価な撮影ですから・・・なぜ?って気持ちでした・・・

技術屋は完全な焼入れをして、焼戻しで粘りを出せと言います。

その理由は、同じ金属組織で有れば形が変わることがないってことでして

包丁の先から根元まで均一に温度を上げれば良いということでして、

完璧な焼戻しで組織を戻せば良いという事なんだそうでう。

それは、車を作る時の金型では、鋼板を数十トンでプレスして作るので

割ることも歪が出ることも許してくれません・・・数日で割れたりしたら

使ってくれませんから常識なんだそうです。この技術で包丁を作るわけですから

並の技術で出来るわけない・・・なので高橋の包丁でも厳密に言うと製品のバラつきが

絶対に有るのですが、金型には無理ですがまな板を叩くぐらいでは負けないので

そんじょそこらの大メーカーの包丁より素晴らしいんだと思います。

求める次元が違うので、高橋のサブゼロも技術屋に言わせると40点・・・

完璧なサブゼロをすると一本当たりかなり高額になるわけで仕方の無いところですね

関の刃物はその昔から有名ですが戦後、輸出で利益を出すことに特化したために

メーカーに包丁金属を造らせて型抜きをして包丁の砥ぎをして早く簡単に利益が

出るようにやったので、今では料理人は関の包丁は使いません・・・

それに新潟の燕のステンレス包丁も同じような事をしたので、ステンレスは斬れないって

言われるのも真実です。

包丁メーカーも儲けてなんぼですから、手を掛けず、いっぱい売れればいい時代でしたから

ステンレスは斬れないって言われているんですね・・・

じゃ~なんでステンレスを使うのよ?って思うでしょ・・・

本当は、不純物が少なく鍛冶屋が自由に浸炭させて造る包丁が良い

昔の反射炉で作った鉄や明治12ぐらいまでの外国の鉄が非常に良いんだそうです・・・

そんな鉄を造るのにコストが掛かりすぎる・・・昔の良質のスエーデン鋼なんかだと思います

自然に鉄の中にクロムなどが入っているので錆びにくい・・・今ではコストの問題が

有りまして高価なモリブデンを少々足してクロムやニッケルなどを足してコストを

下げたのがステンレスなんだそうです。 そんな訳でそのままではろくな刃物に成訳ない

ステンレスを鍛造するのには、かなりの力が必要だそうです。

冷間鍛造がクロムや炭素を細分化して同じ大きさに潰すことができるので良いわけですが

冷間鍛造では強力な力が必要です、熱を上げれば柔らかくなるので潰し安いですが

組織が細分化できず大きな組織の中に小さな組織が出来てしまう・・・そうすると

変形したり割れたりするんだそうですよ。どうりで・・・高橋のベルトハンマーの鍛造の

スピードと回数が違う・・・動画で鍛造包丁を見ることが出来ますが・・・タンタンと叩いて

鍛造だと・・・?あれではステンレスの包丁を斬れる包丁にするには無理が有る・・・

そこまでしてやっとハガネの包丁と同等の包丁が出来るわけです・・・

ここまでこだわると儲けが出ないので、多分やらないでしょう?

まぁ~こんな話を夜中までするので、眠いのに目が覚める・・・・

オヤジ様は、仕事の夢を観てるのか?朝まで寝言を・・・結局寝れたのは三時間・・・

実際の話・・・俺らはいかに上手く砥いで仕上げるか?これですね・・・

鉄の話であの人達と語り合うと数ヶ月は掛かりそう・・・・

親父さんの娘達は、あんな親父さんによくするのは何か魂胆があるのか?

親父さんの小銭を狙ってるのか?と心配なんだそうだ・・・・

これなんだよ・・・・自分の包丁の秘密・・・高橋の包丁を使うと斬れるので

イラつかいない、疲れない、仕事が上手くなったように思える・・・・その理由が

どうしても知りたかった・・・鍛冶屋になるわけでは無いけれど・・・

科学の進歩とその技術と高橋兄弟の職人の技・・・これなんだと思う・・・

親父さん曰くあの金属が良いっていうので作ったペティーが俺のお気に入り

でも高橋以外では造れないので生産中止・・・これが20年以上持ってる

長生きな包丁・・・沢山造ったのですが持ってる人はどうかな?です・・・

砥ぎにくく、硬いのに粘る・・・ただし扱いが悪いと錆びる・・・・

炭素量1%の鋼材ですが、他の包丁メーカーが腕が悪くて造れない・・・

あれはダメだって決め付けるので廃盤・・・・鋼材メーカーは売れなければ

儲からないので仕方ない・・・商品にならないわけです。

ココが面白い・・・なので本当に良い包丁は少ないってわけです。

少し前に、本焼きより霞の方が斬れると言った堺の庖丁屋さんの目は正解だと思います

本焼きは中途半端に焼入れをするのが昔からの技術・・・上手く使えるように

造るのがハガネの堺の庖丁なんでしょうね・・・包丁としてはそれで良い訳です・・・

しかし色々な刃物としては扱いが非常に難しい・・・少し前の科学では最高なんでしょうが?

錆びなくて欠けず斬れる・・・・これからの刃物はどんどんとそうなるでしょう・・・

親父さんが造った頃には包丁に見合う砥石も無い・・・だから俺のように喜ぶ人も

少なかったのかもしれません・・・


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