2012年6月11日月曜日

ステンレスの本焼き

たまに、オヤジ様が言うにはうちで使かってるステンレス鋼で本焼き(水)で造ると凄いもん
出来るんだよと・・・・43であんなふうに出来るでしょう…
0.8や0.9のステンレス鋼で造ればもっとすごいのが出来る。しかし手間とロス分を考えると
値段が高くなるし、普通の人が使い切れないし、・・・・・だそうです。

鋼材を切り出して鍛造して、包丁の形に切り出してから、焼きなまし、ハガネは24時間、ステン系は
48時間、藁灰の中でゆっくり傷めた鉄を冷まして分子構造を元に戻す作業が有り
それから焼入れをして・・・焼きもどし、それから砥ぎ?だったかな?鋼材によってはサブプロとか
途中に高橋だけがやってる秘密の作業があったりと・・・鍛冶屋の作業工程は幾つもあります。

今回、見つけ出した極上10本ぐらいは焼入れ作業前の段階でしてここまでくるのにも
数日掛かってるんです。整形してタガネで彫って焼入れして、鍔を溶接して、研磨してから
焼きもどしして粘りを出す(一旦硬くして硬度を上げて、焼戻しで使いやすい柔らかさと粘りを
出す)のだそうです。それからサブプロ工程をしてから砥ぎをして枝付け屋さんに送る

高橋ではコークスと松炭しか使いません。一般に重油とか電気窯とか使うそうです。
何故、オヤジさんは重油とか嫌いなのかは油にある不純物が嫌なのだすです。
硫黄とかが嫌なんだとか・・・
刃物を作るのに鍛造や焼入れの時に酸素が邪魔をするんだとか・・・・_?
なのと、炭やコークスは炭素の塊なので鉄をねって(漢字はどれ?練る煉る錬る?)いくときに
浸炭するし脱炭が無いのが理由なんだとか。
刃物は酸素が災いするので焼き鈍しに藁灰に入れるのもゆっくり冷ますのと酸素に当てない
のが理由なんだと・・・

日本刀や本焼き包丁の鋼に粘土をつけるのも酸素からの作用と硬さと柔軟さを出す役目と
焼入れをして水に入れるまでの時間。一瞬でも火から離すと温度が下がり、硬化が始まるんだそうです。
火から水に入れるまでの時間が速くてもダメなんだと?粘度がついてるだけ温度の下がりも遅くなる
780度で焼入れが良い温度ですぐに水に入れるのがベストなんだけど、火から離した瞬間に温度が
下がり、水に入れるときには780度以下ではダメ。これでは意味が無い・・・
そして830度ぐらいまで上げるとぐつぐつになってダメ・・・
ココが焼入れの難しさなんだと・・・・
水に入れるときの温度が大切なんだって・・・

さらに水に入れると熱で金属の周りが沸騰してガスが出る。ガスで冷えないから
鍛冶屋ひとりひとり研究して自分の技術にしてるんだそうです。
一生の間に完全に出来るのはせいぜいひとつの金属だけが普通で
白専門青専門・・・白が良いって鍛冶屋は青は難しい・・・
青専門は、白は難しい・・・・本焼きは白に限るとか青に限るとか評価してるそうです。
関西では粘土を全部塗って厚みを替えて焼入れします。
関東では半分くらい・・・昔から関東の刀は固くて切れるけど折れる
関西の刀は斬れるけど曲がる・・・そんな話は昔から聞きます。

高橋のオヤジさんは、大きく欠けると修理が大変でしょう?
だから細かく欠けるぐらいにして、曲がる方が直しが楽でお客さんにはそれが良いって
考えだそうです。
刺身包丁などはまな板を叩くなんて仕事はしないで刺身を斬るだけ
まな板に当たるのは最後に切っ先だけを使い斬るので刃が痛まないので
固くて良いのだそうです。
落としたら割れるぐらいでもOKなんだと和食の人が言っていた・・・・

家庭や洋食はまな板を叩くような使い方をします。それでは刃は欠けるより
曲がる方が良い。
中華もそうです。香港の料理人はいろんな包丁も使いますが
基本は中国料理は中華包丁ひとつでやり抜けます。
なので毎日砥いで切れるようにしないといけないので
杉本の中華包丁が良いって言います。理由は早く砥げる・・・
簡単に砥げなければダメ。なので柔らかいのに斬れるのが良いだそうです。

ではオヤジ様に特注で硬い包丁を造ってもらった自分は何故?そんなに硬いのか?
斬れ重視なんです。
ペティーなどまな板を使わないで使う包丁なので斬れが大事・・・・
牛刀はなんにでも使いますが、千切りでもまな板を叩くのはアゴに近い部分だけ
なるべくまな板と刃を当てません・・・
これが出来るようになると刃を鋭利にできます。長斬れします。
明治生まれの最初の師匠はキャベツの千切りで音が斬れる音だけでして
まな板の傷が少ない・・・・
物が斬れずにまな板を斬ってるうちは良い包丁は要らない・・・・よく言われました。

やっと少しだけ近づいてきてるかも?なので自分の砥ぎは結構鋭利に砥いでいます。
他人が使うとダメです・・・包丁を他人に借りない貸さない理由はこんなことです。

そんなこんなが理由でステンレスで水焼きを造らない理由もあります。

前にも動画を出しましたがキャベツを本焼き牛刀で斬る動画を出しました。
まだまだですが・・・動画を見れば判ります。まな板にアゴの近くを当てて切っ先までは
なるべく当てずに、円で斬る引き斬りのつもりです。こう使うと鋭利に砥いでも長斬れするんです。

6 件のコメント:

  1. 先日は相談にのっていただきありがとうございます。(^^)
    温泉大好きさんのブログ、どんどんさかのぼって読ませてもらっています。素材の性質とか、難しい事・わからない事がいっぱいですが楽しくて何回も読んでます。

    温泉大好きさんのアドバイスもふまえて、いまどの包丁にしようか迷ってます。

    キャベツ千切り、見事です(*´∇`*)

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    1. こんばんは
      遡ると違う事が書いてあります。オヤジ様の言うことが違ったり
      自分の記憶が違ったり…恥ずかしいです。
      震災後は暇だったから色々教えてもらい、試作まで造って貰ったり出来たんです

      キャベツの千切り如きでめっそうもないです・・・

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  2. クレソンさん 自慢じゃないけど僕だってキャベツの千切りは凄いよ!
    最高のスライサー持ってるから(爆
    包丁の研ぎ時を音で判断する時に 嫁が根菜類を切る音を聞きます
    にんじんなんかが切れずに割れる音になったら 研がなきゃ!
    と思います。
    僕の出刃も大きな魚を捌くとのこぎりになります(汗
    切れと刃の一番良いところを見つけるのは中々難しいです(汗
    どうしても切れを追及し、頭も出刃で落とそうとするからですけど(汗
    難しいから楽しいんですけど(笑

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    1. 剣の達人が人や竹や鉄を斬るにも斬る目があるそうな?
      キャベツもなるべく長い糸のようになるように考えて切ってます…
      スライサーなんかに負けるもんか~(笑)

      今日は凄い人に会ってきましたよ。焼入れの名人です・・・

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  3. ZETEC超男様

    包丁の作成過程、非常に面白く読まさせて頂きました。
    鍛造、焼き入れ、焼きなましなど祖父が印鑑を製作していた際も
    色々と独自の技法を行っていたそうです。
    特に焼き入れの温度は非常にシビアだったらしく
    季節により水の温度を変えたりと工夫したと言っていました。

    ただやはり職人だったので最後までその工程全てを
    見せて貰う事が出来なかったのは残念です。
    見せて欲しいと言ってみたのですが・・・
    それが職人を職人たらしめているんですかね?

    また過去には企業の方がいらっしゃり、祖父の方法について
    尋ねて来たそうです。
    分子を見る事のできる顕微鏡で印鑑を見たところ
    鉄の分子が隙間無く一様に並んでおり、
    非常に不思議かつ手に入れたい技術だったようです。

    高橋刃物製作所もきっと企業が欲しくても手に入れられていない
    独自の技術を沢山持っているんだろうなぁと思います。
    でもその技術が伝承されない事が残念で仕方ありません。

    誰か伝承者になってくれないもんですかねぇ・・・

    キャベツの千切りは凄過ぎてよく分かりません・・・
    包丁の刃がまな板に当たらないのにシッカリ切れる??
    そんな状態なのに【極上】を持ってしまった事が
    今更ながらプレッシャーに感じます。

    でも頑張って精進します!!

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    1. 世の中には技術研究者が見てスバラシイって解るが
      それを造る技術は持っていないものなんだそうです。

      今日のブログで書いてみます

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